校長室より

2026年3月の記事一覧

「現状維持は似合わない」

現状維持では成長できない。

だから不安や緊張に立ち向かう。

そんな経験を積みながら、先輩たちも大きな自信を手にしたのです。

 

【後期終業式】

 

 皆さん、おはようございます。時が経つのは早いものです。今日、1年間の学びを終える節目の日を迎えました。皆さんにとってどんな1年だったでしょうか。改めて、自分の大高生活を評価してみてほしいと思います。

 さて、前回の全校集会で、私は皆さんに「仲間と共に大宮高校で学んでいることに喜びや幸せを感じてほしい」ということを伝えました。いろんな仲間と関わり合える今の環境を活かしてほしい。ここで学ぶことを目指し、大高生となったことに自信を持ってほしいと願っています。今日は、前回の話の続きとして、「現状に満足、あるいは現状に妥協し、成長のチャンスを放棄していないかを自分に問うてほしい」ということを話したいと思います。簡単に言えば「チャレンジしているか?」ということです。

 私は、まずは大前提として、この大宮高校での生活が、皆さんにとって「コンフォートゾーン」であってほしいと願っています。大高生であることの喜びの実感や学びの充実、仲間の存在などによって、精神的に快適なゾーンにいてほしいと思っています。もちろん、それは単に与えられることによって得られるものではないので、自分の努力も必要です。

 その上で、皆さんには心地よくてストレスフリーの生活に満足することなく、「コンフォートゾーン」から「ラーニングゾーン」へと常に一歩踏み出してほしいと願っています。「ラーニングゾーン」とは、「自分にできるだろうか」と心配したり、ちょっと失敗をして冷や汗をかいたりするなど、不安や緊張を感じながら、現状の知識やスキル、経験では通用しないことに向かっている状況を指します。人が最も成長する環境と言われています。

 福沢諭吉やウォルト・ディズニーの言葉にもあるように、志を遂げようとする者にとっては、「現状維持は退歩」であるといえます。大宮高校に学ぶ皆さんに、現状維持は似合わないと思っています。成長という現象は安定の外側で起きます。翼を押し上げるのは向かい風です。向かい風という抵抗(ストレス)がなければ、空へと飛び立つことはできません。私たちにとってストレスは成長のエネルギーでもあるのです。これからの未来、豊かな社会の創造を担う大きな志を持つんだということを忘れないでほしいと思います。そして、成長のチャンスを逃さないでください。

 ところで、今回も大高生に関する素敵なエピソードを紹介します。先日、市内に住むある方から学校にメールが届きました。本校1年生の生徒4人に、地域の広場で幼稚園に通う子供たちと遊んでくれたことへの感謝を伝えたいとのメールです。遊び始める前には保護者に「大丈夫ですか?」と確認をとってくれて安心できたこと、遊ぶ中では「道路には出ないようにね」などの声掛けで、小さい子の安全に気を配ってくれたことなどが書かれていました。また、その方は、遊んでくれた生徒のように優しい子どもに育つよう頑張りたいとも書き添えてくださいました。

 わざわざメールをいただいたことに私も感謝したいと思います。また、大高生が地域の中で、他世代の方々とお互いを尊重しながら交流していることをとても嬉しく思いました。まさに、私たちが社会の中で、人と人とのかかわりあいの中で生きていることの素晴らしさを感じる出来事です。皆さんにはこれからも、地域の中の学校であること、地域の一員としての高校生であることを意識して、日々の生活を送ってほしいと思います。大宮高校は、地域に愛され、応援してもらえる学校でありたいと思います。中学生にとっても目標であり憧れの学校でありたいと思います。我々教職員と皆さんの手で、魅力ある大宮高校を築いていきましょう。

 最後に、先日の卒業式で、卒業生代表の先輩が答辞の中で述べた言葉を、この場を借りて1年生にも紹介します。「私たちは、世界が大きく変化する中で、思うようにいかず、立ち止まることもあるかもしれません。しかし、大宮高校で培った経験があれば、私たちはどんな困難でも乗り越えていけると確信しています。」大宮高校での日々の実践の中で、自分の手でつかんだ自信が伝わる力強い言葉です。

 皆さんにも、ぜひそうあってほしいと思います。これからの大高生活で、何に挑戦し、どんな経験をして、どれだけの自信を手にしますか? どんな卒業式を迎えるかは自分次第。自分の未来を創るのは自分自身です。今一度、現在の自分の学校生活を振り返り、2週間後に始まる新学年のスタートに向けて、学校生活の充実と進路実現、そして人として成長していくための目標設定と行動計画についてじっくりと考えてください。やる気に満ちたいきいきとした姿で始業式に臨んでくれることを期待しています。

               

「大宮高校の財産は『人』である」

大宮高校の誇りである皆さんの卒業を心から祝福します。

皆さんは大宮高校の財産であり、社会の宝。

それは同時に、あなたがかけがえのない存在であることの証でもあります。

あなたにだからこそできることがあるはずです。

 

式辞

  柔らかな日差しに包まれ、早春の清々しい空気が満ち溢れる今日の佳き日に、御来賓の皆様の御臨席を賜り、御家族の皆様と共に「埼玉県立大宮高等学校第76回卒業証書授与式」を挙行できますことは、私ども教職員にとりましてこの上ない喜びでございます。御臨席をいただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

 ただ今、卒業証書を手にした356名の皆さん、卒業おめでとうございます。また、3年間お子様を支え、共に歩んでこられました御家族の皆様に、心からお祝いを申し上げます。今日、卒業式という晴れ舞台に立っている卒業生の皆さんは、大高生として過ごしてきた3年間を思い出し、感激もひとしおのことと推察します。

 皆さんは、この大宮高校での3年間を仲間と共に全力で駆け抜けました。その中で学んだこと、経験したこと、そして時に悩み、葛藤したことのすべてが、皆さんを成長させてきました。また、皆さんはこの大宮高校の更なる躍進に向けて、歴史をつないでくれました。大宮高校の一番の財産が「人」であることを改めて強く感じます。未来に向け、新たなステージへと進みゆく皆さんを、とても誇らしく思います。

 高校での学びを終えた皆さんは、これからの社会の担い手としてのスタートラインに立ちます。その社会は今、かつてない速度で変化しています。急速に進むデジタル化、気候変動、少子高齢化、そして分断や孤立。これらは、決して遠い問題ではなく、皆さんの世代が主役となって解決していかなければならない課題です。

 とりわけ、これからの社会において心配なのは、人と人のつながりの希薄化です。SNSは発達し、情報は溢れ、物理的・時間的な距離は縮まりました。しかし、本当の意味で「人と向き合う」ということが減ってきたのではないかと思います。自分と異なる意見に耳を傾けることをせず、非難や拒絶をする。自分のことで精一杯で、困っている人に気づかず、気づいても声をかけられない。そうした社会の姿が様々な課題を生み出しています。

 しかし、中学校生活の3年間をコロナ禍で過ごした皆さんは知っているはずです。人と関わること、人間関係が人生を豊かにする最大の財産であることを。大宮高校で様々なことを経験し、友と過ごし、仲間と協力し、教員や親と対話する中で、それを実感したはずです。

 哲学者アリストテレスは、「人間は社会的動物である」と述べました。これは、私たちが一人では生きられない、他者とのつながりの中でこそ、本当の自分を発揮できるということを意味しています。また、イギリスの政治家、ウィンストン・チャーチルは、「我々は得ることで生計を立て、与えることで人生を築く」という言葉を残しています。

 人生において大切なことのひとつは、自立するための力を蓄えることです。知識を深め、技術を磨き、自らの糧を得る。それは大人として歩む第一歩です。しかし、それだけでは人生は未完成です。いうまでもなく、人間は決して一人では生きていけない存在だからです。

 私たちが今日ここにいられるのは、誰かが育ててくれたから、誰かが支えてくれたから、そして社会にその仕組みがあったからです。私たちは常に、他者の恩恵を受けて生きています。だからこそ、次は皆さんが「与える」側に回ることで、社会という大きな輪の一部となり、生きがいを持って自分らしい人生を築くことができるのだと思います。

 誰かのために自分の時間を使うこと、困っている人に手を差し伸べること、自分の知識や技術で社会に貢献すること。そうした「与える」という行為こそが、単なる「生存」を超えて、皆さんの人生を「意味あるもの」に磨き上げていくのだと思います。

 皆さんがこれから出会う困難の多くは、自分一人では解決できません。「人と人との関わり」や「支え合い」、「他者とのつながり」が不可欠であり、その中にこそ、人生の本当の価値があります。どうか、異なる意見の人の話に耳を傾け、自分とは異なる背景を持つ人々と協力することで、新しい可能性を生み出す人になってください。

 大宮高校が目指しているもの、それは、これからの社会を担う、未来を創るリーダーの育成です。今日、私たち教職員は胸を張って皆さんを送り出します。近い将来、皆さんが未来の創造者の一人として社会のどこかで活躍してくれることを心から願っています。

 もう一度言います。大宮高校の財産は「人」です。巣立ちゆく皆さんです。大宮高校百年の歴史が生んだたくさんの宝が、今、社会の様々な場所で輝いています。次は皆さんの番です。大きな志を胸に、次への一歩を踏み出してください。大宮高校は、未来に向かう皆さんをこれからも応援し続けます。

 結びにあたり、これまで本校教育活動の充実・発展のために、絶大なる御理解と御協力を賜りました御家族の皆様に心から感謝申し上げます。また、御来賓の皆様には、今後も引き続き、特段の御指導と御支援を賜りますようお願い申し上げます。

 卒業生の皆さんの未来に、幸多からんことをお祈りするとともに、御臨席を賜りました皆様に重ねて御礼を申し上げ、式辞といたします。

 

 令和8年3月14日      

 埼玉県立大宮高等学校長 松中 直司