「大宮高校の財産は『人』である」
大宮高校の誇りである皆さんの卒業を心から祝福します。
皆さんは大宮高校の財産であり、社会の宝。
それは同時に、あなたがかけがえのない存在であることの証でもあります。
あなたにだからこそできることがあるはずです。
式辞
柔らかな日差しに包まれ、早春の清々しい空気が満ち溢れる今日の佳き日に、御来賓の皆様の御臨席を賜り、御家族の皆様と共に「埼玉県立大宮高等学校第76回卒業証書授与式」を挙行できますことは、私ども教職員にとりましてこの上ない喜びでございます。御臨席をいただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
ただ今、卒業証書を手にした356名の皆さん、卒業おめでとうございます。また、3年間お子様を支え、共に歩んでこられました御家族の皆様に、心からお祝いを申し上げます。今日、卒業式という晴れ舞台に立っている卒業生の皆さんは、大高生として過ごしてきた3年間を思い出し、感激もひとしおのことと推察します。
皆さんは、この大宮高校での3年間を仲間と共に全力で駆け抜けました。その中で学んだこと、経験したこと、そして時に悩み、葛藤したことのすべてが、皆さんを成長させてきました。また、皆さんはこの大宮高校の更なる躍進に向けて、歴史をつないでくれました。大宮高校の一番の財産が「人」であることを改めて強く感じます。未来に向け、新たなステージへと進みゆく皆さんを、とても誇らしく思います。
高校での学びを終えた皆さんは、これからの社会の担い手としてのスタートラインに立ちます。その社会は今、かつてない速度で変化しています。急速に進むデジタル化、気候変動、少子高齢化、そして分断や孤立。これらは、決して遠い問題ではなく、皆さんの世代が主役となって解決していかなければならない課題です。
とりわけ、これからの社会において心配なのは、人と人のつながりの希薄化です。SNSは発達し、情報は溢れ、物理的・時間的な距離は縮まりました。しかし、本当の意味で「人と向き合う」ということが減ってきたのではないかと思います。自分と異なる意見に耳を傾けることをせず、非難や拒絶をする。自分のことで精一杯で、困っている人に気づかず、気づいても声をかけられない。そうした社会の姿が様々な課題を生み出しています。
しかし、中学校生活の3年間をコロナ禍で過ごした皆さんは知っているはずです。人と関わること、人間関係が人生を豊かにする最大の財産であることを。大宮高校で様々なことを経験し、友と過ごし、仲間と協力し、教員や親と対話する中で、それを実感したはずです。
哲学者アリストテレスは、「人間は社会的動物である」と述べました。これは、私たちが一人では生きられない、他者とのつながりの中でこそ、本当の自分を発揮できるということを意味しています。また、イギリスの政治家、ウィンストン・チャーチルは、「我々は得ることで生計を立て、与えることで人生を築く」という言葉を残しています。
人生において大切なことのひとつは、自立するための力を蓄えることです。知識を深め、技術を磨き、自らの糧を得る。それは大人として歩む第一歩です。しかし、それだけでは人生は未完成です。いうまでもなく、人間は決して一人では生きていけない存在だからです。
私たちが今日ここにいられるのは、誰かが育ててくれたから、誰かが支えてくれたから、そして社会にその仕組みがあったからです。私たちは常に、他者の恩恵を受けて生きています。だからこそ、次は皆さんが「与える」側に回ることで、社会という大きな輪の一部となり、生きがいを持って自分らしい人生を築くことができるのだと思います。
誰かのために自分の時間を使うこと、困っている人に手を差し伸べること、自分の知識や技術で社会に貢献すること。そうした「与える」という行為こそが、単なる「生存」を超えて、皆さんの人生を「意味あるもの」に磨き上げていくのだと思います。
皆さんがこれから出会う困難の多くは、自分一人では解決できません。「人と人との関わり」や「支え合い」、「他者とのつながり」が不可欠であり、その中にこそ、人生の本当の価値があります。どうか、異なる意見の人の話に耳を傾け、自分とは異なる背景を持つ人々と協力することで、新しい可能性を生み出す人になってください。
大宮高校が目指しているもの、それは、これからの社会を担う、未来を創るリーダーの育成です。今日、私たち教職員は胸を張って皆さんを送り出します。近い将来、皆さんが未来の創造者の一人として社会のどこかで活躍してくれることを心から願っています。
もう一度言います。大宮高校の財産は「人」です。巣立ちゆく皆さんです。大宮高校百年の歴史が生んだたくさんの宝が、今、社会の様々な場所で輝いています。次は皆さんの番です。大きな志を胸に、次への一歩を踏み出してください。大宮高校は、未来に向かう皆さんをこれからも応援し続けます。
結びにあたり、これまで本校教育活動の充実・発展のために、絶大なる御理解と御協力を賜りました御家族の皆様に心から感謝申し上げます。また、御来賓の皆様には、今後も引き続き、特段の御指導と御支援を賜りますようお願い申し上げます。
卒業生の皆さんの未来に、幸多からんことをお祈りするとともに、御臨席を賜りました皆様に重ねて御礼を申し上げ、式辞といたします。
令和8年3月14日
埼玉県立大宮高等学校長 松中 直司