校長室より

第74回卒業証書授与式

令和6年3月14日(木)、天候にも恵まれ、第74回卒業証書授与式を厳かに挙行することができました。当日の朝、業務さんに言われました。「昨日の卒業式予行の後、3年生が下足箱を丁寧に掃除をしていたんです。隅々まできれいに拭き掃除をしていました。」これが大高生だと嬉しくなりました。とても寂しいですが、卒業生の前途を祝福し、式辞を掲載いたします。

 

校長式辞                          

 三寒四温を繰り返しながら、気が付けば木々の芽がふくらみ、春の訪れが感じられるようになりました。今日この佳き日に、PTA会長、後援会会長、同窓会会長のご臨席を賜り、保護者やご家族の皆様方とともに「埼玉県立大宮高等学第74回卒業証書授与式」を挙行できますことは、私たち教職員にとりましてこの上ない喜びでございます。皆様、誠にありがとうございます。

 ただ今、卒業証書を授与しました351名の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんの3年間にわたる努力と成長に心から敬意を表します。 

 皆さんは、3年前、コロナ禍の県立高校入試を突破し大高生となりました。当時はまだ学校行事や部活動が制限され、宿泊行事や部活動の大会が中止になるなど、辛い思いをした人も多かったでしょう。2年生になってからは、行事や部活動の制限も徐々に緩和され、文化祭や体育祭も実施できるようになりました。しかし、文化祭直前で学級閉鎖になり、感染を拡大させないために登校を禁じられ涙をのんだクラスもありました。準備の途中になったままの教室を思い出します。秋には、沖縄への修学旅行も実施できました。中学時代に経験できなかった修学旅行を大高の仲間と経験できた人というも多く、いつまでも語り合えるよき思い出となったことでしょう。3年生になってからは、部活動の大会や学校行事もコロナ前に戻り、ドイツ姉妹校への派遣も実施できました。皆さんは、最上級生として行事を盛り上げ、部活動では立派な成果をおさめました。体育祭で全団の団長と一緒に選手宣誓ができるとは、、、私にも素敵な思い出ができました。 

 私は、皆さんの授業をよく覗きにいきました。教室の前から、皆さんの真剣な眼差しを見るのが好きでした。教室の緊張感と時折起こる生徒の笑い声も好きでした。生徒同士での活発な話し合いも、聞いていて楽しいものでした。よき仲間、生涯の友ができましたね。ずっと大切にしてください。 

 コロナに翻弄された大高生活でしたが、皆さんはその時々の状況を真摯に受け入れ、今自分たちが置かれている環境の中で最善を尽くしました。これが、大高生のすごいところです。この「現況の中で最善を尽くすこと」はとても大きな力になります。少々不本意ながらも、このままでは十分でないと思いながらも、自分が置かれている環境の中で、努力していると次の扉が必ず見えてきます。これが本当にやりたいことなのかと迷いながら、もがきながらでも、自分ができることに真摯に取り組んでいる人には、別の道が必ず現れます。次の扉を開けたり、別の道に進んだりしても、これまで真摯に向き合い努力してきたことは絶対無駄にはなりません。むしろ、その経験が次に生きてきます。これから、今よりも広く新しい世界に進む皆さん、自分が置かれた環境の中で、楽しみながら最善を尽くしてください。心が折れそうになったら、もっと強くなろうなどと無理をする必要はありません。そんな時は、大高の仲間を頼ってください。 

 大学等に進学し、新しいスタートラインに着く皆さん、皆さんが活躍するフィールドは世界です。世界の同じ世代の人たちがどのような考えを持ってどのような活躍をしているのか、注目してください。高校時代が夢の土台作りの前期だとすれば、大学時代は、夢の土台作りの後期です。土台は広ければ広いほどその上に高いものがそびえます。まずは多くの人に出会ってください。自分と異なる価値観に出会ったら、そむけずにまずは関心を持ってください。価値観が多様に存在する中で全ての人が幸せで持続可能な生活を営むことができる社会を創ることはとても難しいことです。しかし、これが皆さんに求められている命題です。様々な分野で未来を創るトップリーダーとなるための、広い土台をつくってください。 

 来年、もう一度チャレンジする皆さんに、42年前に浪人生活を経験した者として私事をお話しします。私の予備校での最初の英語の講義でした。その先生は、小柄でぽっちゃりした男性で、教室に入ってくると生徒たちから笑い声がおこりました。するとその先生はこう言ったのです。「何がおかしい。大学生は学生だ。就職した人は社会人だ。お前たちは学生でも社会人でもない。何者だ。宇宙人か。宇宙人なら合格するまで上向いて歩くな。」強烈でした。私はなぜかその先生に惹かれ、英語が好きになり、英語教師となりました。今の自分があるのは、浪人したあの1年があるからです。浪人というのは、1つの目標だけを目指すことが許されるいわば贅沢な1年です。家族や周囲の人たちに感謝の気持ちを忘れずに全力で挑戦してください。過去の事実は変えることはできませんが、過去に起こった出来事の意味は変えることができます。朗報を待っています。 

 保護者・ご家族の皆様、お子様のご卒業、心からお祝いを申し上げます。コロナの状況が変化していく中で、感染拡大防止と教育活動の継続をどうのように両立していくか、私たちは常に悩みました。後になってみれば、こうした方がよかったという反省もあります。その中で、保護者の皆様のご理解とご協力を得ながら、お子様の成長を共に伴走できたことは、私たち教職員にとって心強い支えとなりました。PTA行事も再開していただき、「チーム大宮」の素晴らしさを改めて感じました。深く感謝の意を表します。ありがとうございました。 

 結びになりますが、卒業生の皆さん、私は、皆さんの真摯に取り組む姿に感動し、皆さんと目と目を合わせての挨拶や笑顔、そして何気ない会話で、いつも元気を頂きました。ありがとう。これからも、誰かに何かを与えられる人であり続けてください。皆さんのこれからの活躍を心から願っています。Dream, Plan, Action and Smile 

                           令和6年3月14日

                               埼玉県立大宮高等学校長   鎌田 勝之