校長室より
第73回卒業証書授与式 式辞
校長式辞
木々の芽もふくらみ、春の訪れを感じる今日この佳き日に、保護者、ご家族の皆様方とともに「埼玉県立大宮高等学校第73回卒業証書授与式」を挙行できますことは、私たち教職員にとりましてこの上ない喜びでございます。ご臨席誠にありがとうございます。
ただ今、卒業証書を授与しました350名の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんの3年間にわたる努力と成長に心から敬意を表します。振り返れば、皆さんの大高生活は新型コロナウイルスと闘かった3年間でした。臨時休校に始まり、分散登校となり、体育祭、文化祭、修学旅行等々の学校行事、部活動の多くの大会も中止や延期となりました。溢れてくる不安や怒りの感情をどこにぶつけてよいかわからない日々も多くあったことでしょう。しかし、皆さん、自分を律し、自らの心をよく整えて見事に大高生活を送りました。本当に立派です。
「No more 青春泥棒」をスローガンにかかげた大高祭。皆さんにとっては最初で最後の大高祭でした。クラス企画の準備をする皆さんの生き生きとした姿、それを嬉しそうに見守る先生方の笑顔、来場者に楽しんでいただくことを最優先に考えた皆さんのおもてなしの精神、全てとても素敵でした。私も学校行事の意義を改めて感じながら、大高祭を実施できる喜びに浸りました。グランドに打ちあがったフィナーレの花火は皆さんの心に焼き付いていることでしょう。この大高祭のようにコロナ禍の中で皆さんが築いた一つ一つが、後輩に引き継がれ、大宮高校の新たな伝統となっていきます。
皆さんは、当たり前だと思っていた日常がどれほど大切なものだったかを痛いほど感じました。その分、大高での思い出は、皆さんの心に鮮明に刻まれているはずです。先生と一緒に真剣勝負を繰り広げる授業、意見を交わす仲間との話し合い、リモートで参加した授業、廊下にあるロッカーでの立ち勉強、仲間と切磋琢磨した部活動の練習や大会・初めての校外合宿、自ら挑戦した科学系オリンピック、等々、皆さんはいつも努力と挑戦を続け、誠実に、真摯に、勉強、部活動、学校行事に向き合ってきました。その姿を見て、私はこの1年間ですっかり皆さんのファンになりました。ファンですから、これからも叱咤激励し、応援を続けます。
大学等に進学し、新しいスタートラインに着く皆さん、皆さんが活躍するフィールドは埼玉県ではありません。日本でもありません。世界です。世界各国の同じ世代の人たちがどのような考えを持って活躍をしているのか、是非注目してください。高校時代が皆さんの夢の土台作りの前期だとすれば、大学時代は、夢の土台作りの後期です。土台は広ければ広いほどその上に高いものがそびえます。まずは多くの人に出会ってください。自分と異なる価値観に出会ったら、そむけずにまずは関心を持ってください。価値観が多様に存在する中で全ての人が幸せで持続可能な生活を営むことができる社会を創ること、これはとても難しいことですが、これが皆さんに求められている命題だと思います。様々な分野で未来を創るトップリーダーとなるための、広い広い土台をつくってください。
来年、もう一度スタートラインに着くためにチャレンジする皆さん、40年程前に浪人生活を経験した者として私事を一つお話しします。私の予備校での最初の英語の講義でした。その先生は、小柄でぽっちゃりした男性で、教室に入ってくると生徒たちからかすかに笑いがおきました。するとその先生はこう言ったのです。「何がおかしい。大学生は学生だ。就職した人は社会人だ。お前たちは学生でも社会人でもない。何者だ。宇宙人か。宇宙人なら合格するまで上向いて歩くな。」強烈でした。私はなぜかその先生に惹かれ、英語が好きになり、英語教師となりました。今の自分があるのは、浪人したあの1年があるからです。浪人というのは、1つの目標だけを目指すことが許されるいわば贅沢な1年です。家族や周囲の人たちに感謝の気持ちを忘れずに全力で挑戦してください。朗報を待っています。
保護者の皆様、お子様のご卒業、心からお祝いを申し上げます。この3年間は感染拡大防止と教育活動の継続をどうのように両立していくか、私たちは常に悩みました。後になってみれば、こうした方がよかったという反省もあります。その中で、保護者の皆様のご理解とご協力を得ながら、お子様の成長を共に伴走できたことは、私たちに教職員にとって心強い支えとなりました。特に、今年度は、多くのPTA行事を再開していただきました。「前例踏襲ではなく、形が変わってもできることをやりましょう。」というPTA会長のお言葉のもと、多くの方々に協力を頂き、「チーム大宮」の素晴らしさを改めて感じました。深く感謝の意を表します。ありがとうございました。
結びになりますが、卒業生の皆さん、私は、皆さんの真摯に取り組む姿に感動し、皆さんと交わす何気ない会話や挨拶で元気を頂きました。ありがとう。これからも、誰かに何かを与えられる人であり続けてください。そしてこの学び舎で共に過ごした仲間を生涯大切にしてください。皆さんのこれからの活躍を心から願っています。
Dream Plan Action
令和5年3月16日 埼玉県立大宮高等学校長 鎌田 勝之